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最前列に座っている初老の女性が梶川の妻のほうを向いていた。「運転していたのはあなたじゃないんですからね。あなただって、本当はそう思っているんでしょ? でも世間体のこともあるし、何もしないと人から何といわれるかわからないから、こうして謝りにみえたんでしょ? そんな形だけの謝罪なんて、いくらしてもらったって嬉しくも何ともありませんからね、もうやめてください」 「いえ、私はそんな……」梶川の妻は反論しようとした。 「いいです、いいです。もう何もいわないでください。そこでそんなふうに立っていられると、まるでこっちがあなたをいじめているような気がするんです」そういってから初老の女性は、ふうーっとため息をついた。それがよく聞こえるほど、室内は静まりに返っていた。